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道志村の森を守るボランティアに参加して

道志村の森を守るボランティアに参加して

 
 「年寄りの冷水」と言われたが、横浜市の水道水の源泉である道志村の森を守る道志水源林ボランティアの会に参加した。30年の付き合いで、こちらの性格を知り尽くした、横浜南支部小笠原支部長の誘いにのせられてのものだ。

 前日、服装や装備の準備も終わって、後は水筒に昼飯だ。「当日、コンビニで買ったら」と言われたが、「水は水道のボランティアで行くのだからペットボトルはおかしい」と言うことで古い水筒を準備し、中に氷を入れて「年寄りに冷水」を。

 7月4日(土)朝7時40分、関内の市役所前に集合。8時にはバス2台を連ねて出発する。車内で自己紹介や班編成の報告、会の趣旨や注意事項の説明を受ける。参加者は年配者が多いものの今回は特別に関東学院の学生も大勢参加し、いつもとは異なる雰囲気だとか。見渡せばペットボトルを持っている人が案外多いのに驚く。10時半には道志村に着く。市の施設で着替えた後、新規参加の南支部の荒川君と同じ六班の列に並ぶ。ヘルメットを装着し、道具の鋸は大きめのものを選択する。手をふさぐ、はしごやロ-プ、滑車は若い人が持ってくれた。リ-ダ-は小田さん。現地の専門家指導者は佐藤俊夫さん。ソルティシュガ-だ。これからの作業は甘いか、辛いか、指導者次第かな。?

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 山の上作業現場まで15分以上歩く。この森は民有林で、手入れが行き届かず木はヒョロっと伸び放題。根元に光が届かず、草もまばらだ。歩き易いが、雨水を大地に留めないから水源地には適さない。間伐をして植物の生える環境にして保水力をあげようと言うわけだ。間伐する木には目印がしてある。それにしても虫はいないし、鳥の鳴き声もしない。小田さんに聞くと針葉樹林はこんなものだとか。生物は広葉樹、照葉樹でなければ生きられないということらしい。

 

 1本目はリ-ダ-の小田さんが手本をみせる。はしごのてっぺんまで上り、ロ-プを木の上方に結び掛け、それを倒す方向の木に引っ掛けた滑車を使って引っ張るのだ。準備ができると倒す方向の根元にまず水平に切り込み、30度から45度斜めから切り込みいれて受け口を作る。樵が斧で切り込みを入れているのを鋸でするわけだ。それが終わると反対側に回って追い口にも切り込みを入れる。受け口と追い口の間につると呼ばれる切込みのない部分を残すことが最も重要で、これで容易に倒れないが、残った全員が掛け声合わせてロープを引いて木が倒す。30メ-トル近い木が倒れるのだから地面が揺れる。桂枝雀の言う笑いの基本「緊張と緩和」状態であるが、笑いよりホットした気分にさせられる。あとは枝を払って4メートルごとに細分し、付近の危険の少ない場所に置く。

 

 リーダーが次は新規参加者でと言うので、大学生がはしごに登りロープを掛けた。切り込みには私が手を上げた。切込みを入れるとこの鋸が良く切れる。
よく切れるが、それでも直径40センチはある木だから受け口からおい口にかかるころには息が切れた。荒川君にバトンタッチで一本倒す。少し光が差し込んでくると自己満足であっても、心は充足感で満たされる。少し成長の遅れた木はロープを掛けなくても、つるを残しておけば押せば容易に倒れる。

 

この繰り返しで午前中の作業を終える。その場の適当な場所で各々が昼食を取る。海老名のサービスエリアで買ったおにぎりを食す。海苔の巻き方が分からないのでおにぎりを落とし、地面の土と杉の葉がついてしまった。黒ゴマとひじきをまぶしたおにぎりだと思って冷えた水筒の水で口の奥に流し込む。
うまい。やっぱり「年寄りには冷水」だ。

 

 午後からはもっぱら枝払いとロープの引っ張り役。最後の一本は、はしごに登ってロープ掛けに挑戦した。はしごと言っても通常のものではない。中心に柱が一本だけ。しかも直立に近い。3メ-トル程度のてっぺんに立つと急傾斜の地面に立っている木でもあるので、思ったより高さを感じる。木にへばりついてロープを廻すのだが、ある人から天才的な不器用と評された手先が思うように動かない。
 木から落下して死に損なったことから、恐怖心も手伝ってそれまでの人より手間取ったが、なんとか終えることができた。荒川君が切り込みを担当する。残り全員が力を合わせて木を倒しにかかったが、途中となりの木に引っかかって押せども引けども動かない。危険を承知でリ-ダ-の小田さんが、倒れ掛かった木の途中に切り込みを入れ、一方は自重で、他方を引っ張る形でバランスを崩すと見事に地響きを立てて両方とも地面に倒れた。思わず全員が拍手したところで今日の作業は終了した。

 

 15分ほど歩いて施設に戻る。疲れているのか作業靴の紐を解くのにも手間取る。汗をふき取り、そのまま着替えを済ませ、バスに乗り込み、まずは道志村の道の駅に行く。お土産を買う人もいるが、自分が流した汗の補給に、そこに湧き出る水にコップを突き出す人も多い。私もコップを突き出し「年寄りにも冷水」を。

 

 帰りは緊張から開放されたからか、居眠りをする人が多い。「緊張と緩和」では笑いより眠りのほうが強いみたいだ。バスの中で横浜市水道局の川井浄水場の職員が挨拶をしたあとで横浜市民としては、うかつにも初めて聞く話をした。

 

 横浜市の川井浄水場が建替えの時期に来ており、新しく作る浄水場は、市がその敷地を無償で提供して、施設は民間で建設すると言う。ということから、いずれ、水道事業は民間が行うようになるとか。チョッと待ってよ。これでいいの。小泉改革とかで「民間でできることは民間で」とか言う掛け声はあったけれど、水道は競争もない独占業務だし、民間じゃあ駄目でしょう。これは役所がやるべき事業じゃないの。民間は損をすることはやらないから、将来の料金の値上げは目に見えている。利益を上げるためには経費を節減するはずだから、基本的に水道管の補修にはお金を使わないだろう。現にこのボランティアも、儲からないから森の手入れがされず、荒廃した民間の森の手入れを市民が会費を募り、労務も提供しているんじゃないの。目先の経費節減だけを見ていたら将来に禍根を残すんじゃないか。ラジオで聞いたところでは、ロンドン市では、民間の経営になったとたんに料金は上がったし、水道管の破裂事故が増加したそうだ。南米のボリビアでは料金の値上げにたまりかねた市民が井戸を掘ったら、雨水は公共から委託された水道水利用の横取りにあたるとして利用者から料金をとり、たまりかねた市民が暴動寸前になり政府が違約金を払って契約を解除したとか言っていたはずだ。

 

 

 食料、水、エネルギ-を支配すれば世界を支配できると言う話がある。食料はシカゴで巨大商社が市場を支配しているし、エネルギ-の元の石油はアラブ諸国などOPECで決められてしまう。水道はマフィアと呼ばれる巨大な5社が大部分を支配していると聞く。しかも水なしでは人間は生きられない。こんな重要なことが一部の人の主張する経済原則だけで決められていいのかと思った。私自身の偏見が大いにあるが、西洋人の欲の深さは日本人の常識以上のものがあると思う。契約だからと雨水の利用にまで金を要求する西洋人の欲深さには驚く。
 例え当初日本の会社が運営するとしても巨大資本が乗り込んできたら、ひとたまりもないだろう。その時には彼らはどんな理屈をつけるのか。

 それにしても枝雀師匠。「緊張の緩和」からは笑いより眠りの力の方が強いようですよ。こんな重要な時に皆寝ているもん。いろいろ考えさせられたボランティア活動でした。

(神調報H21.8・9月号掲載) 横浜南支部 渡部 勇

 

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